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水の太陽の章、二

 ノアはまだ帰ってこない。不審な物音を聞きつけ、たった一人で祭壇の間を見に行って、それからずっと帰ってこない。
 見張りの男達が、やっとシアのいる神殿の中庭に入って来た。今ばかりは無言を守ってもいられない。シアは早口で知る限りの状況を彼らに話した。
 ノアが一人で賊を偵察に行ったことを話すと、男達は蒼白になってシアの側に一人を残し、祭壇の間へ向かった。
「賊の狙いはやはり神剣でしょうか?」
 男は娘くらいの歳とはいえ村にとって重要な役割を果たす舞姫に丁寧な口調で尋ねた。シアは両手を握り締めて、
「おそらくそうでしょうね。それ以外にありませんから。村の者でもないでしょう」
「村の人間であるはずがありませんよ。神剣がなくなっては、儀式が出来ない。また前のような飢饉が起こったら困りますし……」
 今目の前に立っている温和そうな男は、妻と生まれてくるはずだった子供を栄養不足による死産で喪ったという。アリカとリスルを糾弾したこともあった。しかし、まっとうな人間ならば立ち直れるはずなのだ。流れゆく時間を受け入れ、心の傷を癒すことが。それが出来ない人間が、心の穴を埋めるために盗みや殺人を犯す。少なくとも彼女はそう思っていたし、自分の舞は極めればそんな人間を癒すことが目的なのだとわかっていた。
「そうですね。神剣は村の守りでもありますし。あれがなくなったら、あれよりももっと大変なことになるでしょう……」
 二年前の春に、村にはぐれ者の一族が押し入った。賊達は村の畑を踏み荒らし、金品を奪い、神剣を守ろうと神殿の入り口を塞いだ人間を次々と切り殺した。ノアとリスルが儀式を執り行った年だ。ノアはその後しばらくふさぎこんで、自分の部屋から出てこなかった。
 あのときに、シアはノアに受け入れてもらうことが出来なかった。ノアを癒したのは、アリカとリスルだ。自分は何もできなかった。あんなにも憔悴していたノアを慰めることが出来なかったのだ。
 それが今でも心残りで。今も、ノアの身に何かあったらどうしようかと、心配でたまらない。
「シアは、ノアとは従姉妹同士でしたね」
「そうです。小さい頃から無謀な子だったけれど、まさかこんな危ないことをするなんて思ってもみませんでした。……あ、帰ってきたのかしら?」
 シアは神殿から出てくる男達を指して言った。一通りの見回りを終えて、祭司達に事情を聞いてきたところなのだろう。しかし、彼らは何も知らないはずだ。
「どうでしたか? ノアはどこですか?」
「ああ、シア。疲れてないか?」
「……ノアは?」
 シアは男達の前に立ちふさがり、目を吊り上げた。彼らがノアを伴っていないのはどう考えてもおかしい。
「ノアはどうしたんですか? ちゃんと説明してください。怪我をしたのならば私が付き添いますし、それに……」
「ノアは、どうやら……誘拐、されたみたいで……」
「誘拐!? 賊に連れ去られたのね? クアイス、説明してください。どうして? どうしてノアがそんなことになったの?」
「そんなことを言われても……」
 シアに詰め寄られた、男達の中でひときわ若い二十歳そこそこの青年が、シアの剣幕に押されて口ごもる。
「どうしてですか! どうしてノアがいなくなるの? だから言ったのよ、危ないからやめてって……」
 シアはクアイス達を無視し、神殿の建物の中に踏み込んだ。神剣の確認をしなければならない。
「シア、シア、ノアは、その……探すよ、俺達で。探すから……」
「嫌よ、来ないで! あなた達なんかあてにならないわ。神殿に人が侵入したっていうのに誰も気づかないんだから! 探すっていうのなら私を連れて行ってちょうだい。そうじゃないと許せないわ」
 クアイスは早足で歩くシアの後をついて、必死で頭を下げた。確かに警備が緩んでいたのは事実だ。平和ボケと言われても仕方がない。しかし、シアにだけは失望されてはいけなかった。信頼してくれていたからこそ、彼女の怒りと失望は深く暗く大きいのだ。
「そんなこと出来るわけないだろう」
「どうしてよ。ノアは私の従妹ですもの、私が探すのが筋と言うものだわ。彼女と最後にいたのも私。どうしていけないの?」
「それは……危ないから――」
「今のノアは、どんなに危ない目にあっているか分からないでしょう?」
「そんなこと言われても……」
 今までに見たこともないシアの様子に、クアイスはどうにかしてシアをなだめようと懸命に声を振り絞った。しかし彼女は聞きそうにない。
「お願いよ、ノアを探しに行くのなら私を連れて行って。そうしないと、私あなたと縁を切るわよ。私はまだまだ舞姫でいたいんですもの」
 シアの言葉に、クアイスは力なくうなだれた。それは困る。せっかく両親にも紹介――といっても、狭い村のことなので村人のほとんどが知り合いだが――しようと思っていたのに。
「……とりあえず、その話は神剣があるかどうか確かめてからにしないか?」
 クアイスの言葉に、シアはそっぽを向きながら冷たく言い放った。
「何を言っているの? 鍵を壊すことは出来ても、かけなおすことは出来ないわ。あなた達が確認できなかったということは、神剣の入った箱が開かれていないという証拠でしょう」


「おまえ、何するんだ! いきなり、こんな……」
「なあ、ちょっとくらい黙ってられねえのかよ? さっきからぎゃあぎゃあうるせえな」
「おまえが私を下ろせばいいんだよ!」
 ノアの身体を抱えたままで軽々と森を抜ける少年に、ノアは先ほどから叫び声を上げっぱなしだった。もうかなり村からは離れてしまっただろう。少年の体力は底無しなのだろうか。
「だからさあ、俺はおまえに一緒に来て欲しいんだって」
「私は行きたくない! 村にいる!」
「そんなこと言われても困る」
「困ってるのは私のほうだよ! 全部説明しろ、どうして神剣が欲しいのか。おまえは誰なのか」
「いや、まあ、その……俺は見てのとおりはぐれ者で……この呼び名嫌いなんだけどな。名前はユアス。よろしく」
 少年――ユアスは、ふいに立ち止まってノアを暗い夜道に下ろすと、彼女の右肩を掴んで言った。しかし、よろしくと言われても、ノアのほうにはよろしくする気などさらさらない。朝になれば太陽の昇る位置で方角も分かるだろう。そうしたら隙を見て逃げだすのがいい。
「そう。私はノア。それで、ユアス、どうして神剣が欲しいの。それがないと、村は本当に危ないんだ」
 ノアが両腕を組んで溜息をつくと、ユアスはさらに深く息をついて、
「それは俺もよく分かるんだよ。でもこっちにも事情があってなあ……」
「そんなの当たり前だろう。たいした理由もなしに神剣を盗まれては困る。その具体的な理由を聞いてるんだから。だいたい、剣と私は何の関係もないはずだよ」
 ユアスの様子がおかしくなったのは、彼女の真っ白な髪の毛を見たときからだ。この髪の毛には、何の意味もない。あるのは忌まわしい過去と忘れたい記憶、そして忘れたくない思い出。それだけだ。初対面の人間に驚かれるようなたいしたものではない。
「確かに関係ないけど……白い髪だったから、思わず……」
「どうして白い髪の毛だと連れてくるのか、ゆっくり話してもらいたいのだけれど」
 ノアは不機嫌な表情でユアスを睨んだ。
 夜が明けるまでの間ならば、彼の話につきあってもいいと思った。


 シアはじっと神剣の前に座り、静かにユギリアイナに祈りを捧げていた。すぐにでもノアを探しに行きたかったのだが、クアイスは未だに首を縦には振らないし、賊によって汚された聖域を清めるのが先だと司祭達に言われたのだ。
 ユギリアイナ、水と慈愛の女神。
 雨の神トラリフ―シャの妻にして、この世界の主神だ。
 神の世界に、時間はないという。古の三世界も、現在の世界も、神々はいつでも見渡すことが出来るのだ。
 それならば時代をわざわざわける必要はないと思うのは、怖れ多いことなのだろうか。神の意思を理解しようなど、人間の思い上がりだ。
「クアイス、終わりました。司祭長にそうお伝えしてちょうだい。……夜が明けたら捜索隊を出すのでしょう? 私も行くわ。止めたいのなら止めればいいけれど、ノアばかりか私までいなくなったら困るわよね?」
「脅しか?」
「そうよ。悪いかしら?本当に、私は一人でもノアを探しに行くわよ。きっと神経がまいってると思うから」
 シアの言葉に含まれた意味も理由も、クアイスは知っている。なぜと問うことは出来ない。たとえ張本人でなくとも、ノアの悲しみを語るシアは痛い。従姉妹というのがどれくらいの絆を持っているものなのかは分からないが、彼には理解することの出来ない深いものなのだろう。
「そんな無謀なこと……」
「――あなたがいなくなったのでも、私は同じようにしたでしょうね。あなただって、私がいなくなったら探しに来てくれるでしょう? それと同じことなのよ。私を思うなら止めないで欲しい。私を思うなら、ついてきて欲しいわ」
 ノアは、親しくない人間にとっては単なる歌姫にすぎない。集落の大部分の人間にとって、ノアは村娘のうちの一人だ。それが、たまたま歌姫に選ばれたことで少し注目されるようになった少女にすぎないのだ。集落から少し離れた高台に位置する神殿へは、人々は月に一度の水の日以外は訪れないし、歌姫達がその歌や舞を披露するのも年に一度だ。
 しかし、シアはずっと幼い頃からノアと育った。ノアのいない日はなかった。いつか離れると知っていても、お互いが危険な状況に陥っているのを見過ごすことは出来ない。
「――分かった、長に頼んでみる」
「お願いね、私のためにも」
 クアイスは頭を抱えた。彼の行動は、いつだってシアのためだ。


「その神剣な、多分……じゃなくて、確実にユギリアイナのためのものじゃないと思う」
「どういうこと?」
「――それはスラガの剣って言って、「水晶域」を発見した俺の先祖が掘り出した紫水晶が嵌め込んである。ほら、これだ」
「それで?」
「……黙って聞いてろよ。その石と一対になってる存在、遠く離れていても呼び合う双子石が、こっちの青い石だ。俺はこれを頼りにこの剣を探し当てたんだ」
 ユアスはスラガの剣と青い石とを並べて地面に置いた。ノアの瞳の色に少し似ている。
「この剣を鍛えたのは石を掘り出した人間の孫、やっぱり俺の先祖だ。いつから俺の一族がこれを失ったのか知らないけど、俺の一族が散り散りになったのは剣をなくしたことが原因なんだと思う。それで……この剣は、もともとは大地の恵みに感謝することを目的としてつくられた、オルテツァの剣だ。だからユギリアイナの神殿にあるのはおかしいし、今までそれで儀式が成功してたのが不思議なくらいだ。とにかく、さっきも言ったように、これの正当な所有権は俺の父親にあるってことだ」
「どうしてそんなことが分かるの?」
「石が呼び合うって言っただろう。見てみろよ」
 ユアスは剣の上に青い石をかざした。ちょうど紫の石と向かい合う位置だ。
 しばらく待つと……石が、淡い光を放ち始めた。水色の光と、藤色の光。光の道が伸びてお互いを照らし出す。幻想的で優しく、儚くもある光景に、ノアは声を忘れて見入っていた。
「これが……石が呼び合うってことか?」
「そうだよ。納得したか?」
 ユアスが笑ってノアを覗き込むと、ノアは難しい顔で首をひねっていた。この後におよんで何を言うのだろうと、ユアスは溜息をついた。
「どうしたんだ?」
「おまえの話はよく分かった。でも……おかしいと思わないか? オルテツァに捧げられた剣なら、どうして石は青と紫なんだろう? これではまるでトラリフ―シャとユギリアイナを称える祭具のようだ」
「おまえ、頭が固いな。確かにそれはそうだけど、俺は一族の言い伝えを疑うつもりはない。だったら、おまえもこれが神殿の正当な神具だってことを証明してみせろよ」
 ユアスが詰め寄ると、ノアはあっさりと、
「それは無理だな」
「だったらおまえ……」
「神殿に伝えられていることは少ない。村自体が新しいものだし、神剣は他の神殿から移されてきたものなんだと思うから」
 しかし、それならばノアが足掻いても彼女の正当性を証明することは出来ない。それに引き換え、ユアスは青い石を持っている。この世ならざる不思議な現象を起こした石は何よりの証明となるだろう。
「じゃあ諦めろよ。これはユギリアイナの祭具じゃないんだから、新しい祭具を見つければいいだろう?」
「そう簡単に見つかるわけがないだろう」
「まあな。でも、神剣がないと村が滅ぶとかいうならそれはお互い様だろう? スラガの剣がなくなったせいで、俺の一族だって滅んだんだ」
 一族が散り散りになるということがどんなにつらいことなのか、ユアスは推測することしか出来ない。しかし一族だけで集落を作れるほどに大きな、「水晶域」を有する一族の滅亡がどれくらいの意味を持つものだったのかはわずかなりとも感じ取れるつもりだ。
 ノア達には気の毒だが、彼らにとってもこの剣は必要なものだ。青い石だけでは不完全だった。それが、スラガの剣を手に入れることで完璧になる。
「――もうやめないか? 堂堂巡りだ、私にとってもおまえにとっても神剣は手放せないものなのだから」
「……おまえ、いつもその口調?」
「は? どういうことだ?」
「女らしさのかけらもないなあと思って」
「――悪かったな。普段の私はもっとしとやかだ。しかし賊に対して愛想よく振舞うつもりはない」
「俺は賊じゃないって」
「おまえのどこが賊じゃないんだ? 侵入罪に誘拐罪だ」
 それを言われると弱い。しかし、そこでユアスは首を傾げた。ノアは、神剣の盗難については何も言及していない。
「窃盗、とかは?」
「だって……」
 ノアは困ったような顔で呟いた。
「剣がおまえ達にとっても大切なものだっていうのは分かったし……。それがオルテツァの剣だっていうなら、一概におまえが悪いとも言い切れないし……」
 それに、と、ノアは内心で続けた。
 ユアスが、そんなに凶悪なはぐれ者だとは思えない。自分なりの信念や礼儀にのっとって行動している――というより、ノアを連れ来てしまったのもふいに思いついての行動だろう。なんとも微笑ましい。ノアはこんなかわいらしい少年を憎むことなど出来ないと思った。


「ねえ、クアイス――」
「どうした?」
「ノアがいなくて……儀式は出来るのかしら? ノアと一緒に鈴も消えてしまったし、他の女の子は何の練習もしていないわ。それとも……私一人でやるの?」
「そんなこと、俺に言われても……」
「分かってるわ。ついてきて、司祭長様のところに行くから」
 シアは疲れきった頭を振って立ち上がった。儀式を行えなければ、また何か災いが起こるのではないかと思うとたまらなく怖い。
 具体的に何が怖いのかを考えて、シアは眉を寄せた。
 自分は――――責められるのがおそろしいのだ。アリカとリスルのように、おまえ達のせいで村に災いが降りかかったのだと、責められるのが怖いのだ。
 なんて、身勝手な考えなのだろう。彼女達が潔斎をしているときに賊が侵入したのはシアのせいではないが、責任の一端は彼女にもある。侵入者の存在に気づかなかった神殿の者達全員にあるのだ。
「……シア……顔色」
「何? 私なら大丈夫よ。気にしないでちょうだい」
 不安げな顔でシアを覗き込んできたクアイスに、シアは不機嫌な声を返し――また、自己嫌悪に陥った。クアイスは自分を心配してくれているのだ。それなのに、自分ときたら彼に笑顔を返すことも出来ない。これでは、気分が悪いと自ら語っているようなものではないか。
「分かった……じゃあ、俺は外で待ってるから」
 クアイスがそっとシアから離れ、司祭長の部屋の前に立ち止まった。
 シアは長の部屋の石の扉を叩く。しかし、しんと無言が響き、人の気配はしなかった。
「中庭かしら、祭壇の間かしら? 神剣の様子を、見に行かれたのかもしれないわ」
 シアは小走りに剣のところへ向かった。気持ちの悪い静寂が辺りを満たす。
「――司祭長様!」
 扉の開け放たれた祭壇の間に飛び込み、シアは叫んだ。
「シア。こちらへ来なさい」
 司祭長が難しい声音でシアを呼ぶ。神剣が収められた石の箱は蓋が開けてあった。
「どうなさいましたか? 鍵は壊されていないと伺いましたが」
「壊れてはいない。しかし――剣がないのだ」
「……どういうことですか」
 怪訝そうに目を細めたシアを、司祭長は眺めて、
「何者かが、鍵を開けて神剣を取り出したということだ。鍵をこじ開けることは出来ても、元通りにすることは出来ない」
 妙な力のこめられた長の声に、シアは顔を蒼白にして立ちつくした。
「それが私だと仰るのですね?」
 あまりのことに息が詰まるが、シアはやっとのことで息を吐いた。
「しかし、そう考える以外にない。賊はおまえとノアの知り合いであり、ノアは賊と消えたと考える他は」
「だったら、私がここに残っている必要がありません。それに、ノアは誘拐されたのでしょう? でしたら何かの痕跡が残っているはずです」
「それがないから、そういう結論に達したのだよ」
「そんなわけはありません!」
 シアが声を張り上げると、外で様子をうかがっていたクアイスが放たれた扉の影から顔を覗かせた。
「シア、どうした?」
「クアイス、おまえは向こうへ行っていなさい」
「クアイス!」
 シアと司祭長の声が重なり、ぶつかり合った。クアイスはシアの悲鳴を聞いて、祭壇の間へ入り込んだ。
「長、どうしたんです?」
「私は何もしていません! クアイス、行きましょう。わけが分からないわ。私がノアを連れ戻します、それでよろしいのでしょう?」
 シアは司祭長を睨み、クアイスをうながして祭壇の間を出た。完全に、頭に血が上っている。
 きっと、自分が村人に責められたくないからシアにすべての罪をなすりつけたのだと思った。警備の男達も、シアと親しいクアイスを除いて司祭長に賛同しているのだろう。
 人間は醜い。こんなにも醜い。
 ノアのいない村になど、もういたくはなかった。


 ユアスはノアの白く透き通った髪の毛を見つめ、そっと首を傾げた。
「どうして白いんだ?」
「おまえに話す義務はない」
 ノアはユアスから目を逸らして言い放った。しかし、すぐに低い声音で言い直す。
「どうしてだと、思う?」
 誰かに聞いて欲しかった。ひたすらに抱え込んできた思いは、もう溢れてしまいそうだ。シアにも話したことはなかった。単純な事実以外は、何も。
 ユアスに――聞いて欲しかった。
「……そうだなあ」
 ユアスは少し考えてから、ゆっくりとうなずいた。
「誰か、大切な人を殺されたから――」
「どうして、分か……」
 ノアの言葉を遮り、ユアスがうっすらと微笑む。
「――俺の母親もそうだったから――」



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